1.治ゆとは
業務上または通勤により発生した負傷や疾病が、治ゆ(症状固定)したときは、療養補償や休業補償の支給は打ち切られますが、身体に一定の障害が残った場合には、障害(補償)給付の対象になります。
治ゆとは、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなった状態のことをいいます。傷病が完治した状態をいうのではなく、労災保険の療養の範囲として認められた治療をしても、その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態をいいます。実験的または研究段階のような治療ではなく、通常の医療を施しても、症状が固定したときに、身体障害が残った場合には、障害(補償)給付の対象になります。
2.障害認定
体障害の障害等級表は、次の通りになります。
労働者災害補償保険法施行規則
障害等級 | 給付の内容 | 身体障害 |
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第1級 | 当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の313日分 |
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第2級 | 当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の277日分 |
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第3級 | 当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の245日分 |
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第4級 | 当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の213日分 |
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第5級 | 当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の184日分 |
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第6級 | 当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の156日分 |
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第7級 | 当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の131日分 |
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第8級 | 給付基礎日額の503日分 |
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第9級 | 給付基礎日額の391日分 |
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第10級 | 給付基礎日額の302日分 |
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第11級 | 給付基礎日額の223日分 |
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第12級 | 給付基礎日額の156日分 |
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第13級 | 給付基礎日額の101日分 |
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第14級 | 給付基礎日額の56日分 |
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※給付基礎日額とは、業務上または通勤による負傷や傷病の発生が確定した日の直近3カ月にその労働者に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)をその期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額のことをいいます。
障害等級表に掲げる身体障害が2以上ある場合は、重い方の身体障害に該当する等級になります。これを併合といいます。また、第13級以上の等級の身体障害が2以上あるときは、次のように等級を繰上げて、等級を決めます。
① 第13級以上に該当する身体障害が2以上ある場合、重い方の身体障害の等級を1級繰上げます。
② 第8級以上に該当する身体障害が2以上ある場合、重い方の身体障害の等級を2級繰上げます。
③ 第5級以上に該当する身体障害が2以上ある場合、重い方の身体障害の等級を3級繰上げます。
また、障害等級表に掲げるもの以外の身体障害がある者については、その障害程度に応じ、障害等級表に掲げる身体障害に準じて、等級を定めるとされています。
3.給付内容
障害(補償)給付は、障害の程度に応じて等級が定められています。障害等級は、1級から14級までに区分されていて、1級が最も重い等級になります。
障害等級が1級から7級に該当する場合には、障害(補償)年金が支給され、障害等級が第8級から14級に該当するときは、障害(補償)一時金が支給されます。
4.請求手続きについて
被災労働者は、症状が治ゆした後(症状固定後)に、所管の労働基準監督署に対し、「障害補償給付・複数事業労働者障害給付支給請求書」(様式第10号)または、「障害給付支給請求書」(様式第16号7)を提出します。この請求書には、事業主の証明を記載する欄があります。請求書を提出する場合、事業主の証明が必要になりますが、事業主が、様々な理由から証明してくれないこともあると思います。このような場合でも、労働基準監督署は、請求書を受理し、事業主から「証明拒否理由書」を提出させる、事情聴取をする等の対応をとっています。また、請求書には、医師の診断書(必要に応じてレントゲン等の資料)を添付します。
また、同一の事由によって、障害厚生年金、障害基礎年金等の支給を受けている場合には、併給調整が行われるので、年金の支給額を証明することができる資料の提出が必要になります。
なお、障害(補償)等給付は、傷病が治った日の送日から5年を経過すると時効により請求権が消滅するので注意が必要です。
参考文献:厚生労働省・都道府県労働局、労働基準監督署「障害(補償)等給付の請求手続」