転落事故により脊髄損傷等の傷害を負い後遺障害等級1級に認定された事例(東京地裁平成17年11月30日判決)

■事案概要

被災者は、個人で解体作業を営む被告にアルバイトとして雇用され、家屋の解体作業中に、家屋の2階から転落するという労災事故にあいました。

 

鉄骨を2階から1階に投げ下ろそうとした際に鉄骨とともに1階に転落したものです。

 

被災者は、本件労災事故によって、脊髄損傷、頸椎骨折、胸椎圧迫骨折、腰椎圧迫骨折等と診断され、手術を受けましたが、その後症状固定とされ、両下肢完全運動麻痺、自排泄不可の後遺症が残存したため、後遺障害等級1級3号と認定されました。

■裁判所の判断

裁判所は、高さ3.5メートルほどの位置から1階へ鉄骨を下すにあたり、その作業がたとえ手渡しによるものであったとしても、その転落の危険は十分に考えられることから、事業主は転落防止の何らかの措置をとるべきであるにもかかわらず、転落防止の措置をとらず、安全帯の着用やフックを掛けるための措置等について具体的な注意を促すことをしなかったのであるから、被告には過失があると判断しました。

 

裁判所は、後遺障害等級1級の後遺障害に対して、損害として、後遺障害慰謝料(2600万円)、後遺障害逸失利益(約6101万円)、将来の衛生用品代(排泄処理のためのビニール手袋、ティッシュペーパー等約448万円)等合計約1億0327万円を損害として認定しました。

 

過失相殺については、被災者としても2階から鉄骨を投げ下ろすという行為の危険性を認識でき、近くにいた作業員に相談するなど危険回避のための措置をとることはできたとしつつ、他方で、被災者の経験年数が浅かったこと、被告の注意指導が一般的なものにとどまっていたことなどを考慮すると、1割の過失相殺をすることが相当と判断されました。

 

最終的には、被告に対し、約8123万円の支払いを命ずる判決となりました。