大型蓋成型機での頭部を挟まれ死亡した事例(大津地裁平成22年6月2日判決)
■事案概要
被災者は、窯業・土石製品その他無機化学製品の製造・販売を業とする会社に勤務し、蓋成型機においてトラブルが発生したため、光電管を手で遮断しようとして、蓋成型機を停止させることなく、その背部に入り込んだところ、傾斜から起き上がって来た蓋成型機と支柱との間に頭部を挟まれ、多発脳挫傷を発症し、搬送先の病院で死亡するという労災事故にあいました。
死亡した被災者の父母が、勤務先の会社に対して安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求訴訟を起こしたものです。
■裁判所の判断
裁判所は、本件の機械は、大型の機械であり、隣接する機械との間には、労働者が入り込んで作業を行うための十分な広さがなかったこと、本件の機械の作動中は、1列に並んだ機械が一斉に傾斜し、傾斜の向きも正面ではないため、傾斜時には隣の機械との間隔はさらに狭くなること等の状況からすれば、本件の機械が作動している状態で、隣接する機械の間に立ち入ることは、それ自体、本件の機械との接触により労働者の身体を害する危険があり、しかも、傾斜している本件の機械の背部から、一定程度奥まった位置にある光電管に手をかざそうとするときにはその危険度はさらに高まると認定しました。
そのうえで、会社は、そのような機会の背部に入らないように作業手順を守り安全作業を進めるように労働者を監視し教育すべき義務を怠ったとして安全配慮義務違反を認めました。
裁判所は、後遺障害等級7級の後遺障害に対して、損害として、後遺障害慰謝料(2500万円)、後遺障害逸失利益(約3667万円)等を損害として認定しました。
過失相殺については、本件では、被災者がヘルメットをかぶっていなかったこと及び背部に入る必要がないにもかかわらず、背部に入ったことなどの事情がありましたが、いずれも会社がそのような状況を黙認・放置していたとして過失相殺を認めませんでした。
その他、労災保険より支払われたものを控除し、最終的には、約6140万円の支払いを命ずる判決となりました。