労災による後遺障害とは|給付金額・障害認定までの流れ・等級認定を受けるためのポイントを解説
労災によって怪我をしたり病気になった場合、治療を受けることで症状が改善し、最終的には完治するケースが多いですが、何らかの症状が身体に残ってしまうケースもあります。
これが、後遺症です。
労災が原因で後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害等級認定を受けることによって障害の程度に応じて、労災保険給付を受けることができます。
本記事では、労災の障害等級における認定基準と後遺障害が認定された場合にもらえる給付金の金額、障害認定までの流れや認定を受けるために重要なポイント等について解説します。
- 1. 労災による後遺障害は労災保険から給付金を受け取ることができる
- 1.1. 後遺障害認定を受けるためには「症状固定」の診断が必要
- 2. 障害等級それぞれの内容と補償について
- 2.1. 障害補償給付 給付金の内容
- 2.2. 障害(補償)年金前払一時金とは
- 2.3. 障害補償年金差額一時金とは
- 3. 後遺障害の認定基準(障害等級表)
- 3.1.1. 給付基礎日額とは
- 3.1.2. 算定基礎日額とは
- 3.1. 「併合」または「併合繰上げ」とは
- 4. 障害認定までの流れと必要書類
- 4.1. 医師より症状固定の診断を受ける
- 4.2. 後遺障害診断書と所定の請求書を準備して提出
- 4.3. 労働基準監督署の審査と面談
- 4.4. 認定結果の通知書が届く
- 5. 後遺障害の認定を受けるために重要なポイント
- 5.1. 「症状固定(治ゆ)」まで治療を続ける
- 5.2. 労災事故と後遺障害の関連性を証明できるようにしておく
- 5.3. 初回の申請できちんと証拠を揃えて申請すること
- 6. 労災の障害等級認定の結果に納得がいかない場合
- 6.1. 労働者災害補償保険審査官に審査請求する
- 6.2. 労働保険審査会に再審査請求する
- 6.3. 原処分または裁決の取消訴訟を提起する
- 7. 労災による後遺障害については弁護士に相談しましょう
労災による後遺障害は労災保険から給付金を受け取ることができる
労災を原因とする後遺障害認定がされた場合は、認められた等級に応じて、労災保険から給付金を受け取ることが出来ます。
後遺障害認定を受けるためには「症状固定」の診断が必要
労災による傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療の効果が期待できなくなった状態を、「症状固定(治ゆ)」と言います。
後遺障害認定を受けるためには、医師から症状固定の診断を受ける必要があります。
※症状固定の診断を受けた後の、障害認定までの流れについては後述します。
障害等級それぞれの内容と補償について
障害補償給付は、医療機関で継続して治療を受けたにも関わらず完治せず、一定の障害が残った際に、その症状が労働者災害補償保険法で定められる障害等級表の障害等級に該当する場合に支給されます。
障害補償給付の内容については、障害の程度により大きく2つに分けられます。
障害補償給付 給付金の内容
- 障害等級第1級から第7級に該当:障害(補償)年金、障害特別支給金、障害特別年金
- 障害等級第8級から第14級に該当:障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金
※後遺障害は症状の程度に応じて14段階で区分されており、1級が最も重い症状、14級が最も軽い症状となります。
障害(補償)年金前払一時金とは
障害(補償)年金を受給することになった場合、請求により、障害等級に応じて定められている下記の一定の額を限度として、一回に限り、年金の前払いを受けることができるという制度です。
給付の額は、障害等級に応じて定められている一定額の中から、希望するものを選択できます(下記図表参照)。
前払一時金が支給されると、障害(補償)年金は、各月分の額(1年経過した以降の分は年5%の単利で割り引いた額)の合計額が、前払一時金の額に達するまでの間、支給停止になります。
障害等級 | 前払一時金の額 |
---|---|
第1級 | 給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分、1200日分又は1340日分 |
第2級 | 給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分又は1190日分 |
第3級 | 給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分又は1050日分 |
第4級 | 給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分又は920日分 |
第5級 | 給付基礎日額の200日分、400日分、600日分又は790日分 |
第6級 | 給付基礎日額の200日分、400日分、600日分又は670日分 |
第7級 | 給付基礎日額の200日分、400日分又は560日分 |
障害補償年金差額一時金とは
障害(補償)年金の受給権者が死亡したとき、すでに支給された障害(補償)年金と障害(補償)年金前払一時金の合計額が、障害等級に応じて定められている一定額に満たない場合に、遺族に対して支給される一時金です。
後遺障害の認定基準(障害等級表)
労災の後遺障害に対しては、下記に記載の障害等級表の障害内容と程度に応じて保険給付がなされます。
給付基礎日額とは
「事故に遭わずに普通に働けていた場合にどれくらいの給与が得られていたかを算定」するための基礎となるのが、給付基礎日額で、労働基準法上の平均賃金を意味します。
平均賃金とは、労災事故が発生した日以前の3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った1日あたりの金額を指します。
平均賃金には、ボーナスは含まれません。
算定基礎日額とは
労災事故が発生した日の前1年間に、その労働者が会社から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った金額です。
特別給与とは、ボーナスなど3か月を超える期間ごとに支払われる賃金をいいます。
障害等級 | 身体障害 | 障害(補償)給付金 | 障害特別年金・一時金 | 障害特別支給金 |
1級 | 1. 両眼が失明したもの 2. そしゃく及び言語の機能を廃したもの 3. 神経系統の機能又は神経に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 5. 削除 6. 両上肢をひじ関節以上で失ったもの 7. 両上肢の用を全廃したもの 8. 両下をひざ関節以上で失ったもの 9. 両下肢の用を全廃したもの | 当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の313日分(年金) | 算定基礎日額の313日分(年金) | 342万円 |
2級 | 1. 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの 2. 両眼の視力が0.02以下になったもの 2-2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2-3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 3. 両上肢を手関節以上で失ったもの 4. 両下肢を足関節以上で失ったもの | 同277日分 | 同277日分 | 320万円 |
3級 | 1. 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの 2. そしゃく又は言語の機能を廃したもの 3. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 5. 両手の手指の全部を失ったもの | 同245日分 | 同245日分 | 300万円 |
4級 | 1. 両眼の視力が0.06以下になったもの 2. そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの 3. 両耳の聴力を全く失ったもの 4. 1上肢をひじ関節以上で失ったもの 5. 1下肢をひざ関節以上で失ったもの 6. 両手の手指の全部の用を廃したもの 7. 両足をリスフラン関節以上で失ったもの | 同213日分 | 同213日分 | 264万円 |
5級 | 1. 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの 1-2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1-3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 2. 1上肢を手関節以上で失ったもの 3. 1下肢を足関節以上で失ったもの 4. 1上肢の用を全廃したもの 5. 1下肢の用を全廃したもの 6. 両足の足指の全部を失ったもの | 同184日分 | 同184日分 | 225万円 |
6級 | 1. 両眼の視力が0.1以下になったもの 2. そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの 3. 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 3-2. 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 4. せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 5. 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 6. 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 7. 1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失ったもの | 同156日分 | 同156日分 | 192万円 |
7級 | 1. 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの 2. 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 2-2. 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 3. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 4. 削除 5. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 6. 1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指を失ったもの 7. 1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの 8. 1足をリスフラン関節以上で失ったもの 9. 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 10. 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 11. 両足の足指の全部の用を廃したもの 12. 外貌に著しい醜状を残すもの 13. 両側のこう丸を失ったもの | 同131日分 | 同131日分 | 159万円 |
8級 | 1. 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの 2. せき柱に運動障害を残すもの 3. 1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を失ったもの 4. 1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの 5. 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの 6. 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 7. 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 8. 1上肢に偽関節を残すもの 9. 1下肢に偽関節を残すもの 10. 1足の足指の全部を失ったもの | 給付基礎日額の503日分 (一時金) | 給付基礎日額の503日分 (一時金) | 65万円 |
9級 | 1. 両眼の視力が0.6以下になったもの 2. 1眼の視力が0.06以下になったもの 3. 両眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの 4. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 5. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 6. そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの 6-2. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 6-3. 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 7. 1耳の聴力を全く失ったもの 7-2. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 7-3. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 8. 1手の母指又は母指以外の2の手指を失ったもの 9. 1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃したもの 10. 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの 11. 1足の足指の全部の用を廃したもの 11-2. 外貌に相当程度の醜状を残すもの 12. 生殖器に著しい障害を残すもの | 同391日分 | 同391日分 | 50万円 |
10級 | 1. 1眼の視力が0.1以下になったもの 1-2. 正面視で複視を残すもの 2. そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの 3. 14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 3-2. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 4. 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 5. 削除 6. 1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの 7. 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの 8. 1足の第1の足指又は外の4の足指を失ったもの 9. 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 10. 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 同302日分 | 同302日分 | 39万円 |
11級 | 1. 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2. 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3. 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 3-2. 10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 3-3. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 4. 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 5. せき柱に変形を残すもの 6. 1手の示指、中指又は環指を失ったもの 7. 削除 8. 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの 9. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの | 同223日分 | 同223日分 | 29万円 |
12級 | 1. 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2. 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3. 7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 4. 1耳の耳かくの大部分を欠損したもの 5. 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 6. 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 7. 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 8. 長管骨に変形を残すもの 8-2. 1手の小指を失ったもの 9. 1手の示指、中指又は環指の用を廃したもの 10. 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの 11. 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの 12. 局部にがん固な神経症状を残すもの 13. 削除 14.外貌に醜状を残すもの | 同156日分 | 同156日分 | 20万円 |
13級 | 1. 1眼の視力が0.6以下になったもの 2. 1眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの 2-2. 正面視以外で複視を残すもの 3. 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 3-2. 5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 3-3. 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの 4. 1手の小指の用を廃したもの 5. 1手の母指の指骨の一部を失ったもの 6. 削除 7. 削除 8. 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの 9. 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの 10. 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの | 同101日分 | 同101日分 | 14万円 |
14級 | 1. 1眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの 2. 3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 2-2. 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 3. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 4. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 5. 削除 6. 1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 7. 1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 8. 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの 9. 局部に神経症状を残すもの 10. 削除 | 同56日分 | 同56日分 | 8万円 |
「併合」または「併合繰上げ」とは
障害補償給付において、同一の事故により障害が2つ以上残った場合は、障害等級の併合又は繰上げが行われます。
【併合】
同一の事故による身体障害が2つ以上ある場合に、原則として、そのうち重い等級の方を全体の障害等級として認定します。
【併合繰上げ】
以下の場合、重い方の障害等級が繰上げられます。
- 13級以上の障害が2つ以上(重い方の障害等級を1級繰上げる)
- 8級以上の障害が2つ以上(重い方の障害等級を2級繰上げる)
- 5級以上の障害が2つ以上(重い方の障害等級を3級繰上げる)
- 14級の障害が2つ以上(14級のまま)
障害認定までの流れと必要書類
後遺障害認定を受けるまでの流れは下記のとおりです。
医師より症状固定の診断を受ける
症状固定の診断を受けたら、基本的な治療やリハビリは終了となりますので、医師に後遺障害診断書(労働者災害補償保険診断書)の作成を依頼します。
後遺障害診断書と所定の請求書を準備して提出
障害補償給付支給請求書(様式第10号)、障害給付支給請求書(様式第16号の7)という所定の請求書に記入を行い、医師が作成した後遺障害診断書、もし用意できればレントゲン写真等の資料もあわせて提出します。
※請求書には、基本的に事業主の証明が必要になります。
労働基準監督署の審査と面談
労働基準監督署によって面談による審査が行われます。
面談は、労働基準監督署の調査官や地方労災医員と呼ばれる医師が担当することになります。
面談では、請求書や診断書などの資料だけでは判断できないことを中心に確認が行われることになります。
認定結果の通知書が届く
面談から数か月(おおよそ3か月程度)で、認定結果の通知書が届きます。
労働基準監督署による審査の結果、障害認定がなされる場合には、支払決定通知が送付され認定結果に応じた保険給付がなされ、等級認定が受けられなかった場合には、不支給決定通知が送付されます。
後遺障害の認定を受けるために重要なポイント
後遺症に対して適切な補償を受けるには、後遺障害認定を申請するにあたり重要なポイントがいくつかあります。
「症状固定(治ゆ)」まで治療を続ける
労災事故によって怪我を負った場合は、医師の指示に従って、症状固定の診断を受けるまで治療を継続しましょう。
きちんと治療を受けないでいると、症状が軽いとみなされてしまったり、医師としても症状固定の判断を正しく行うことができません。
障害認定を受けられなかったり、実際よりも軽い等級で認定されてしまったりする可能性もあります。
また、必要に応じて、CTやMRI、レントゲンなどの検査もきちんと受けるようにしましょう。
CTやMRI、レントゲンなどの検査結果は、ケガの程度を証明する重要な証拠になります。
労災事故と後遺障害の関連性を証明できるようにしておく
どんなに重い病気、ケガであっても、それが労災によるものであると証明できなければ、被災労働者は後遺障害認定を受けることはできません。
特に注意すべきは、持病(既往症)があるケースです。
後遺障害を申請する病気やケガが、労災事故とは無関係の持病(既往症)によるものであると判断されると、障害補償給付を受けることが出来なくなります。
したがって、病気やケガが労災事故に起因するものであることや、多少は持病の影響があったとしても労災事故によって悪化した(障害が残った)など、医師からきちんと説明を受け、被災労働者本人が、労働基準監督署に対して説明できるようにしておくことが重要です。
初回の申請できちんと証拠を揃えて申請すること
後遺障害として認定されなかったり、認定されたものの等級が想定よりも低かった等、結果に不服がある場合は審査請求の手続きをすることが可能です。
しかし、審査請求によって一度得られた結果を覆すことは非常に難しいことです。
初回の申請の時点で書類や証拠データをきちんとそろえて提出し、適切な認定結果を得られるようにしましょう。
労災の障害等級認定の結果に納得がいかない場合
障害(補償)給付の申請に対して、適切な障害等級認定が受けられなかった場合の対処法について説明します。
労働者災害補償保険審査官に審査請求する
労災保険給付に関する決定(不支給や低い障害等級の認定等)に不服がある場合、その決定を行った労働基準監督署長の所在地である各都道府県の労働局に置かれた労働者災害補償保険審査官に対して、審査請求をすることができます。
ただし、審査請求には期限があり、労災保険給付の決定があったことを知った日の翌日から3か月以内に行う必要がありますので、注意が必要です。
労働保険審査会に再審査請求する
審査請求が棄却になった場合には、労働審査会に対して再審査請求を行うことができます。
再審査請求にも期限があり、審査請求について審査官が作成した決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内に行う必要があります。
原処分または裁決の取消訴訟を提起する
審査請求や再審査請求を行っても結論が変更にならない場合、処分の取り消しを求めて、取消訴訟を提起することになります。
取消訴訟にも期限があり、処分または裁決があったことを知ったときから6か月以内に、地方裁判所に対して取消訴訟を起こす必要があります。
労災による後遺障害については弁護士に相談しましょう
後遺障害等級の認定基準は非常に複雑で、医学的事項も多く含むため、後遺障害認定の申請を行う際は医師との連携が必須になります。
また、申請には労災の証拠となる書類や資料を揃えたり、医師だけでなく勤務先とも連絡をとる必要があるため、被災労働者本人だけで手続きを行うのは大きな負担となります。
後遺障害の認定申請をしたい、後遺障害として認定されなかった、あるいは認定された等級に不満があるといった方は、一度労災に詳しい弁護士にご相談することをおすすめします。
当事務所では、労災に関するご相談を初回無料で受付しておりますので、お気軽にご相談ください。
労災(労働災害)に関する基礎知識や重要なポイント、注意点についてコラムで解説していますので、ぜひご覧ください。
※本記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。